
開催趣旨
本展覧会は、シルクロード東西の古都である奈良市とウズベキスタン共和国サマルカンド市が、シルクロードを介した文化交流の歴史を背景に姉妹都市提携を結んでから5周年を迎えることを記念して、関係のさらなる深化をめざして開催するものです。
ウズベキスタンを含む中央アジアは、中国・インド・西アジア・遊牧世界を結ぶ交流の地であり、仏教・キリスト教・イスラーム教・ゾロアスター教など多様な文化・宗教が行きかいました。その文化交流は豊かな芸術世界として結実しており、本展ではその広がりのもと、多彩な文化のあり様を一度に体感できます。オアシス都市に伝えられた「奇跡の壁画」であるアフラシアブ遺跡の壁画など世界的にも有名な作品に加え、富雄丸山古墳出土品など奈良に関わる貴重な作品も紹介します。
本展覧会は、ウズベキスタンの国宝級の文化財が一堂に集まる空前の大プロジェクトです。シルクロードを通して響き合う歴史と文化の雄大なロマンを感じて頂けることでしょう。
開催概要
展覧会名 |
奈良市・サマルカンド市姉妹都市連携5周年記念特別展 |
会期 |
2027年7月10日(土)~9月5日(日) |
会場 |
奈良国立博物館 東西新館 〒630-8213 奈良県奈良市登大路町50番地 |
主催 |
奈良市、奈良国立博物館、ウズベキスタン共和国大統領府文化芸術発展基⾦、NHKエンタープライズ近畿、読売新聞社 |
奈良国立博物館
〒630-8213 奈良県奈良市登大路町50番地
- 近鉄奈良駅下車徒歩約15分
- JR奈良駅・近鉄奈良駅から市内循環バス(外回り)「氷室神社・国立博物館」下車すぐ
作品紹介
「使節の間」壁画日本初公開
アフラシアブ遺跡 7世紀(660年頃) アフラシアブ博物館
サマルカンドのアフラシアブ遺跡で発見された、中央アジアを代表する7世紀の宮殿壁画です。11×11mの主室4面に描かれた壁画には、ソグド人をはじめ、唐・高句麗・突厥など様々な民族の使節が色鮮やかに描かれています。本壁画は、交易の中心地であったサマルカンドの繁栄と文化的多様性を示し、まさに「シルクロード」を象徴する壁画として世界的にも有名な壁画です。そのなかでも、今回出陳するうち南側の壁画には、ゾウ・ウマ・ラクダに乗るサマルカンドの王侯貴族たちが、ガチョウとともに儀礼行列をなす場面が描かれています。4面のなかでも力強く描かれ、鮮やかな色彩が最も良く残されている点においても奇跡的な作品です。
大型虺龍文鏡日本初公開
コクテパ墳墓 銅製 紀元前1世紀
ウズベキスタン国⽴歴史博物館
サマルカンドのコクテパ遺跡で、金製装身具などを伴う高貴な女性の墓から出土した銅鏡です。虺龍文鏡は、紀元前1世紀ごろに中国・前漢で作られ、サイズには大・小がありました。本作品は、中国以外では5例しか見つかっていない大型品のひとつ(径18.5㎝)です。シルクロードが開拓されたとされる紀元前1世紀ごろに、中国とウズベキスタンの間に文化交流があったことを証明する逸品です。
大型虺龍文鏡
富雄丸山古墳 銅製 紀元前1世紀(古墳の築造は4世紀後半)
奈良市教育委員会
4世紀後半の奈良市富雄丸山古墳の造出し部で発見された棺の中から出土した銅鏡です。国内40例のうち最大の虺龍文鏡であり、国内出土事例では2例しかない大型品(径19.1cm)です。鏡が作られてから約500年を経て古墳に埋められた稀有な事例であり、そして奈良市と姉妹都市であるサマルカンドのコクテパ墳墓からも上記の大型虺龍文鏡が出土しています。ここからシルクロードの東西をつなぐ絆がうかがえます。
蛇行剣
富雄丸山古墳 刀身:鉄製 4世紀後半 奈良市教育委員会
富雄丸山古墳から出土した、蛇のように曲がりくねった形の鉄剣です。一般的な刀剣は最長でも120cm程度であるなか、本作品は全長237cmと圧倒的な長さを誇ります。形状や長さから、実戦のために製作されたものではなく、呪術的な意味をもつ作品と考えられます。大型虺龍文鏡の出土によってサマルカンドとのご縁を繋いだ、富雄丸山古墳の迫力を物語る傑作です。
蛇形石製品
フェルガナ渓⾕ソーク地区 石製 紀元前3000~前2000年
ウズベキスタン国⽴歴史博物館
今回の出陳作品のうち、もっとも古い時期に位置づけられる作品です。2匹の蛇が絡み合い、胴部には石こう状の白色物質で点状の象嵌が施されています。中央アジアに生息する実際の蛇を忠実に写したものかもしれません。このような把手とって付の石製品の用途は明確ではありませんが、鉱石やラピスラズリ原石の重さを測る分銅として用いられたともいわれます。
釈迦三尊像
ファヤズテパ遺跡 石製 1~3世紀 ウズベキスタン国立歴史博物館
ウズベキスタン南部、アフガニスタン国境に近いテルメズ近郊の仏教遺跡ファヤズテパから出土した石像です。瞑想する釈迦と、両脇に合掌する僧を表す三尊像です。ガンダーラ仏とはやや異なる中央アジア独特の様式です。破壊されたものが多いこの地域の仏像の中でほとんど損傷がないという点で「奇跡のブッダ」と言えます。
騎象狩猟図壁画日本初公開
ヴァラクシャ遺跡 8世紀(730年頃) ウズベキスタン国⽴美術館
ヴァラクシャは、ブハラ近郊に築かれたソグド人の宮殿遺跡です。象を操る2人が豹と戦い、躍動しています。鮮やかな赤色から受ける迫力の一方で、二人の人物が乗る象は、牙の生え方や人物などとの大きさのバランスが実際とは異なり、どこかユーモラス。狩猟図は王侯の勇気と英智を示すものとして描かれました。
クシャーン王侯像頭部
ダルベルジンテパ遺跡 粘土製 1~2世紀
ウベキスタン共和国科学アカデミー美術研究所
テルメズの北方に位置するダルベルジンテパ遺跡の郊外の寺院跡から出土したものです。小さな円形の飾りの付いたとんがり帽子を被った男性の頭部です。このような形のとんがり帽子は当時この地を支配したクシャーン朝の王侯の姿で、仏像の周囲に配された供養者と考えられています。口元に微笑みを含んだ若々しい顔立ちでこの遺跡を代表する彫像です。
菩薩像
ダルベルジンテパ遺跡 粘土製 2~3世紀
ウズベキスタン共和国科学アカデミー美術研究所
ターバンを付け華麗な装飾をまとった人物の上半身です。服装や眉間に白毫の穴を表すことから菩薩像と考えられます。装身具は型押しで作ったものを貼り付けるという技法的な特徴が見られます。やや小ぶりな目鼻立ちには、インドのマトゥラー美術の影響も感じられ、様々な地域の様式が融合した中央アジア美術の特色が表れています。
兵士像頭部
ハルチャヤン遺跡 粘土製 1世紀
ウズベキスタン共和国科学アカデミ美術研究所
ハルチャヤン遺跡は、クシャーン朝の宮殿の跡で、そこには王侯貴族や戦士たちの像が置かれていました。この像は甲冑を着けた兵士の像で大きな目の精悍な顔立ちが特徴です。粘土で形を作って表面を彩色して仕上げる塑像で、顔の部分には酸化鉄を主成分とする顔料による彩色がきれいに残っています。
装飾付納⾻器
ムラクルガン遺跡 土製 7~8世紀 サマルカンド国⽴歴史文化博物館
ソグド人たちは、おもにゾロアスター教を信仰していました。彼らは鳥葬を採用し、白骨化した遺体は納骨器(オスアリ)に納められました。本作品では、聖なる火を息で汚さないようマスクを着用した2人の聖職者が、聖火壇に向かいあっています。ピラミッド形の蓋に描かれた女性の踊り子たちは、楽園のありようや、あるいは完璧さ、不滅性を擬人化して表している可能性があります。
ガラス装飾付小瓶ウズベキスタン国外初公開
アフラシアブ遺跡 ガラス製 9~10世紀
サマルカンド国⽴歴史文化博物館
澄んだブルーが印象的なガラスの小瓶です。ガラス胎を宙吹で丸く膨らませ、高台や口縁を整えた後に、波打つ突起を手際よく貼り付けて作ったものです。中には薔薇水のような香水を入れていたのでしょう。貴婦人の愛用品だったかもしれません。アフラシアブ遺跡では、ブルーや透明のガラス器が多く見つかっています。いずれもローマガラスの製法を受け継いだイスラムガラスで、実用的でシンプルな形が主流の中、この小瓶だけは出色の品。割れず、曇らず千年の時を超えた、まさに奇跡の小瓶です。
鹿形香炉ウズベキスタン国外初公開
ダルベルジンテパ遺跡 銅製 1~2世紀
ウズベキスタン共和国科学アカデミー美術研究所
円形の火皿の縁に、牡鹿がちょこんと前脚をそろえて乗せる姿がユーモラスです。後脚が失われていますが、おそらく長く伸びて把手になっていたと思われます。火皿の底には三つの突起が付き、これを置くことも、持ち歩くことも出来ました。火皿に油を入れて灯明に使った可能性もありますが、ダルベルジンテパ遺跡には仏教寺院があり、香炉とみるのが良いでしょう。高貴な動物(牡鹿)が捧げる香りは格別だったに違いありません。
⼗⼆曲杯
サマルカンド地方 銀製 6~7世紀 サマルカンド国立歴史文化博物館
蓮弁状の12の屈曲があるので、十二曲杯と呼ばれます。このように口縁が屈曲した容器はサーサーン朝ペルシアの金・銀製容器に起源があり、八曲のものもみられ、ポーランドや中国で金・銀製の出土例があります。中央に凸があるのはギリシアの「フィアラ杯」の影響です。日本でも、正倉院宝物中に緑瑠璃十二曲長坏、金銅八曲長坏があります。シルクロードを通じて、西方文化へのあこがれを反映したものであったことがうかがえます。
女性用コート(チャパン)日本初公開
ブハラ 19世紀~20世紀 サマルカンド国立歴史文化博物館
前開きの長袖、長丈の女性用コート。ウズベク語でチャパンと呼ばれます。表地は、経糸が絹、緯糸が木綿の交織布で、染め分けた経糸により紋様を表す経絣。日本古代の経絣との類似をうかがわせます。本作品はブハラで作られたとされ、紫地に黄色・白・赤による大胆な絣紋様を配し、特に背面に配された生命力を象徴する植物をモチーフとした紋様が目を惹きます。
刺繍布(スザニ)日本初公開
ブハラ 20世紀初頭 サマルカンド国⽴歴史文化博物館
ウズベキスタンを中心に中央アジアの広い地域に見られる刺繍布であり、多く壁掛けや、掛け布、礼拝用下敷きとして用いられます。花嫁の婚礼持参品ともされていました。スザニとは、スザン(針)を用いることから派生した名称で、刺繍もしくは刺繍したものという意味があります。花々や蔓草、果物を表現したものが多く、人物や動物を表したものは少ないです。
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